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 DVDで、イギリス映画「銀の靴」Happy Go Lovely(H・ブルース・ハンバーストーン監督/51年)を見た。主演、ヴェラ・エレン、デヴィッド・ニーヴン。

 国際演劇芸術祭で知られているエジンバラ。プロデューサー、「フロスト」はここの劇場で、つまらないミュージカルを上演しようとしている。
 稽古に遅れそうになった女優の「ジャネット」は、偶然、富豪「ブルーノ」の車に乗せてもらった。
「フロスト」は「ジャネット」を、大富豪の情婦とカン違いして、資金をださせようとする。一方、富豪「ブルーノ」は、新聞記者になりすまして、「ジャネット」に接近する。……

 「活動写真」時代の喜劇を見せられているような気になる。ヴェラ・エレンのダンス・ナンバー、「ピカデリー」はおもしろい。(ジーン・ケリーが、シド・チャリシー相手のダンス・シーンで、おなじテーマを発展させている。)

 ヴェラ・エレンは小柄で、大した美人ではないが、いつもキビキビした動き、ひきしまった体型で、「戦後」のミュージカルのトップだった。代表作は「On The Town」(49年)だろうか。
 50年代に入って、きゅうに出演作がなくなる。この「銀の靴」がイギリス・ミュージカルだったように、最後の「Let’s Be Happy」も、イギリス・ミュージカルだった。
 MGM相手に大ゲンカ。さっさと大富豪と結婚して、映画から去って行った。

 後年のデヴィッド・ニーヴンはそれこそ名優だが、この映画ではもっぱらヴェラ・エレンを引き立てている。ほんとうにいい役者だった。

 「彼は、それはそれは大根だった。しかし、そう演じることを絶対的に愛していた。」
 ニーヴン自身がそう語っている。