日頃、まるで縁がないのだが、たまに銀座、新宿、渋谷などを歩く。外国のファッション・ブティックの進出に驚かされる。つい最近も、青山に「ステラ・マッカートニー」がオープンしている。
外国の街を歩いていて、ふと、孤独な旅行者でしかない自分に気がつくときがある。自分でも意外なのだが、渋谷、青山などを歩いて、そんな気分に襲われることがある。
むろん、理由はあるだろう。
最近の私は、浮世離れした「文学講座」などをつづけていて、とくに昭和初期の文学、映画、風俗などに眼をむけることが多い。そのせいで、現実と自分の世界のあまりの懸隔にただとまどっている。
ふと、思い出したメロディーがある。
シネマ見ましょか お茶のみましょか
いっそ小田急で逃げましょか
昭和4年(1929年)、西条 八十作詞。中山 晋平作曲。
東京は銀座、丸の内、浅草、新宿という四つのアミューズメント・センターが形成されていた。西条 八十は、それぞれの土地をとりあげている。
松がとれたら、荷風の『日和下駄』でも読み返そうか。