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いまから半世紀前に、どんな映画を見たのだろう?
 誰がもっとも輝いていたのか。

 私が思い出すのは、イタリアのロッサノ・ブラッツイ。「旅情」で、キャサリン・ヘップバーンの相手をやっていた。あるいは、ミッツイ・ゲーナーを相手のミュージカル、「南太平洋」をおぼえている人がいるかも知れない。
 日本では、「トスカ」ではじめて知られた。ジューン・アリソン、エリザベス・テーラーの「若草物語」や、アンナ・マニャーニの「噴火山の女」。「裸足の伯爵婦人」、「愛の泉」、「雷雨」といった映画に出ていた。

 洋画では、ヘミングウェイの「日はまた昇る」が、映画化された。ヘンリー・キング監督。タイロン・パワー、エヴァ・ガードナー。エロール・フリン、なんとジュリエット・グレコ。ただし、ひどい駄作。当時、私は、ヘミングウェイを翻訳しようと思っていたので、この映画を見てあきれたことを思い出す。

 ルネ・クレールの「リラの門」。マリリン・モンローの「王子と踊り子」。
 日本では、美空 ひばりの「競艶雪之丞変化」あたり。
 市川 右太衛門が「富士に立つ影」、長谷川 一夫が「雪の渡り鳥」で、「鯉名の銀平」を。マキノ 雅弘の「一本刀土俵入」、衣笠 貞之助の「鳴門秘帖」、稲垣 浩の「女体は哀しく」。
 「富士に立つ影」では、北大路 欣也が出ていた。
 佐伯 清の「佐々木小次郎」。この「小次郎」は、東 千代之介だったっけ。女優陣は、花柳 小菊、大川 恵子、三条 美紀、千原 しのぶ。
 吉村 公三郎が島田 清次郎の「地上」を、中平 康が三島 由紀夫の「美徳のよろめき」を、中村 登が井伏 鱒二の「集金旅行」を。
 松林 宗恵が石坂 洋次郎の「青い山脈」のリメイクを。千葉 泰樹が林 芙美子の原作を、三船 敏郎、山田 五十鈴で「肉体の悪夢」。後年の「蜘蛛巣城」の三船、山田よりもずっといい。
 新人たちは・・・前田 通子、泉 京子、筑波 久子、万里 昌子。中原 ひとみ、江原 真二郎。水野 久美、田村 高広がそろそろ出てくる。
 1957年12月。
 日本映画が活力にあふれていた時代。