歳末。
別に何かすることもない。
退屈なので、映画でも見ようと思った。何がいいだろう?
私が選んだのは、「戦場にかける橋」(デヴイッド・リーン監督)だった。なんと、半世紀も昔の映画である。
イギリスの俳優、アレック・ギネス、ジャック・ホーキンズ。ハリウッドのウィリアム・ホールデン。日本の早川 雪州。1943年、ビルマ国境に近いタイのジャングルのなかに作られた日本軍の捕虜収容所。ここにニコルソン大佐(アレック・ギネス)のひきいるイギリス軍兵士の一隊が送り込まれる。捕虜収容所の所長、「斉藤大佐」(早川 雪州)は、タイとビルマをつなぐ泰麺鉄道を完成させるために、クワイ河に橋をかけるため、捕虜を使役する。「ニコルソン大佐」は抵抗するが、やがて「斉藤大佐」の説得に応じて、部下に架橋作業への参加を命じる。日本軍に協力することを拒否したアメリカの海軍少佐「シャース」(ウィリアム・ホールデン)は、脱走に成功する。・・
いま見ても、いい映画だった。
この映画が作られた時期、ジョゼフ・スタンバーグが「ジェット・パイロット」を監督していた。ハワード・ヒューズの製作、ジョン・ウェイン、ジャネット・リー。
ベーリング海峡の哨戒にあたっている「シャノン大佐」(ジョン・ウェイン)のひきいるジェット戦闘機隊は、不法に越境したソ連のジェット機を追尾する。空港に不時着したソ連のジェット機から降りたのは、以外にも女性の空軍中尉(ジャネット・リー)で、過失のため銃殺されそうになったため、空路、亡命をはかったのだった・・。
これは、かつてディートリヒとともに、「モロッコ」をはじめ、数多くの名作を撮ってきたスタンバーグが再起をかけた映画だったが、彼はまったく映画的な創造力を失って、没落して行く。
私は、このときのスタンバーグ、そして、「アナタハン」という愚作を撮ったスタンバーグを見て、ある芸術家が、どうして失速したり、すぐれた才能を失ってゆくのだろうか、と考えたのだった。