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 しばらく前に、BS11で、香港映画、「アゲイン 男たちの挽歌 3」(「夕陽之歌」)を見た。(’08.10.1)。香港映画、黄金期の映画。
 監督は徐 克(ツイ・ハーク)。周 潤発(チョウ・ユンファ)、梅 艶芳(アニタ・ムイ)、梁 家輝(レオン・カーウァイ)、日本の俳優、時任 三郎が出ている。
 映画のなかで、「香港返還は、20年も先のことだ」というセリフが出てくる。
 徐 克(ツイ・ハーク)は、私の好きな映画監督のひとり。

 忘れないようにメモしておいた。
 ストーリーの背景は、ベトナム戦争のさなか、サイゴン陥落までのヴェトナムの華僑社会。ウォーターゲート、ニクソン辞任。戦火から脱出しようとするボートピープルが、香港に押し寄せている。
 周 潤発(チョウ・ユンファ)は、サイゴンでのしあがってきた華僑/黒社会の一員。梅 艶芳(アニタ・ムイ)は、凄腕の女ヒットマン。ほんらい逢うはずのないふたりが、ヴェトナム戦争下に運命的な出会いをもつ。

 「夢は大きければ大きいほど、失望もふくらむ。だから、俺は多くをのぞまない」と、主人公(チョウ・ユンファ)がつぶやく。

 この映画を見ながら、私はサイゴンを思い出していた。作家として、2作目の長編が失敗したため、気分転換のつもりで、ベトナム戦争のさなか、サイゴンに行ったのだった。映画のなかで、私の知っている旧サイゴン(西貢)の風景(とくにレ・ロイの通り、カトリック聖堂、タンソンニュット空港など)が出てきてなつかしかった。
 さらには、ヴェトナムで知りあった十代の歌手、マリー・リンや、これも若い娘だったブ・ニャットフォン(武 日紅)のことが、アニタ・ムイの「キット」に重なってきた。
 このブログ(No.929)で、作家として、2作目の長編(『暁のデッドライン』)で失敗したと書いた。
最近になって、この長編が戦後のミステリー、99本に選ばれていることを知った。
 このコラムを読んでくれた「雨の国の王者」が教えてくれたのだった。

    『暁のデッドライン』を、中田 耕治探偵小説の最高作と見る向きは多いようで、たとえば探偵小説専門誌(幻影城)では、日本推理小説ベスト99の一つに、選出しているし、(中略)
    わたくしは、両方とも、好きだが、どちらかと言えば、天衣無縫(わるくいえば八方破れ)な『暁のデッドライン』よりも、端正で、みずみずしい『危険な女』の方をかうが、あくまでも、それは好みの問題だ。

 私は「雨の国の王者」に感謝している。

 『暁のデッドライン』が失敗した大きな理由・・・天衣無縫(わるくいえば八方破れ)なものになった理由は、外からいろいろと指示されて書いたことによる。かけ出しの新人だったから、担当の編集者が、いろいろとアドヴァイスしてくれるのにしたがったのだが、結果的に、はじめ私の書こうとしていたものと違った主題になった。

 この失敗は、私の最初の挫折。