グローリアは、「戦後」の美女のひとりだが、グローリア・グレアム程度の美女はいくらでもあげられよう。
しいて特徴をあげれば、二重まぶたの眼が、すっと冷酷な光を帯びると、いかにもあばずれといった感じになる。
すれっからしの莫蓮女らしい、下品で、蓮ッ葉な女だが、どこかほかの女にない翳りがたゆたってくる。「人生模様」のマリリン・モンローにも、これはない。「欲望という名の電車」のアン・マーグレットにはとても出せない。
ほしいままに春を枕籍にひさぐ娼婦の役、ギャングの情婦といった役を若い女優がやると、だいたいはほかの役のときよりもずっと輝いて見えるものだが、なかでもグローリア・グレアムは出色だった。もともと平凡な「娘役」をやったことがない。
ある映画評論家が書いていた。
ところで、これはどんな映画ファンもほとんど同じ思いだったと思うのだが、四〇~五〇年代のモノクロ女優のなかで、だれの裸をいちばん見たかったかといえば、それはイングリッド・バーグマンでもなく、ローレン・バコールでもなく、ラナ・ターナーでもなく、バーバラ・スタンウィックでもない・・それはグローリア・グレアムだった。
残念なことに、私はグローリア・グレアムの裸を見たおぼえがない。だれの裸を見たかとえば、マルティーヌ・キャロル、ジャンヌ・モローといったフランスの女優たちを思い出す。グローリア・グレアムといえば、(以下すべて、1958年の資料による。)
マリリン・モンロー 身長=5・5フィート半 体重=118ポンド
バスト/37 ウェスト/23半 ヒップス/37半
ジェーン・ラッセル 身長=5フィート7 体重=135ポンド
バスト/38半 ウェスト/25 ヒップス/38半
エレン・スチュアート 身長=5フィート6 体重=118ポンド
バスト/34 ウェスト/24 ヒップス/36
ドリス・デイ 身長=5フィート5・3/4 体重=116ポンド
バスト/36 ウェスト/25 ヒップス/36
デブラ・パジェット 身長=5フィート2 体重=104ポンド
バスト/33 ウェスト/25 ヒップス/36
リタ・ヘイワース 身長=5フィート6 体重=120ポンド
バスト/35 ウェスト/25 ヒップス/35
こんなことを書きとめておくのは、いささか悪趣味だが。
しかし、私にとっては、こうした女優のスリー・サイズを見届けておくことにはもう少し別の意味がある。
じつは、この1958年当時、シネマスコープばかりではなく、3D(スリー・ダイメンション)も登場していた。つい昨日までは、そんなことばも存在しなかった世界がどこに行っても聞かれるようになって、カメラ、照明、ひいては演出のメトドロジーも変わるだろうと予想された。3D(スリー・ダイメンション)では、ポラロイド眼鏡などという、誰ひとり考えもしなかったアクセサリまでがあらわれた。
ちなみに、当時、ピンナップの女王と呼ばれていたのはヴェジイニア・メヨ。
「我らの生涯の最良の年」で、前線から復員した兵士(ダナ・アンドリュース)を裏切った不倫な人妻。「死の谷」で、愛するガンマンと国境を越えようとして、追手の銃弾に倒れる原住民の女。ヴェジイニア・メヨをおぼえている人がいるだろうか。