私の訳した『虎よ、虎よ!』の冒頭に、ウィリアム・ブレイクの詩が引用されている。
Tiger,tiger,burning bright
In the forest of the night,
What immortal hand or eye
Could frame thy fearful symmetry?
――Blake:Songs of Experience.
虎よ、虎よ! ぬばたまの
夜の森に燦爛と燃え
そもいかなる不死の手 はたは眼の
作りしや、汝がゆゆしき均整を
この詩から「虎よ、虎よ!」という題がとられている。
フランスの詩人、アメリカの詩人はいくらか熱心に読んできたが、イギリスの詩人はひとわたりざっと読んだ程度。ブレイクは好きな詩人のひとり。
The moment of desire!
The moment of desire!
The Virgin
That pines for man shall awaken her womb to enormous joys
In the secret shadow of her chamber.
学生の頃読んだ「アルビオンの娘たちなる乙女」の一節が、いま老作家の口にのぼってくる。
エロティックなイメージが心に刻まれたらしい。
足駄穿かせぬ 雨のあけぼの 越 人
きぬぎぬや あまりか細く あでやかに 芭 蕉
いまの私には、この句のほうがもっとエロティックに見えるけれど。