二月三日、めずらしく雪が降った。積雪、4センチほど。
鉄道のダイヤが大幅にみだれ、航空のフライトの多数に欠航が出た。関東各地の寺社では、節分の行事がとりやめになった。青梅マラソンも中止。
首都圏では、30以上の大学、約100におよぶ小中学校の入試が行われたが、受験生たちにも影響したらしい。
いざさらば 雪見にころぶところまで 芭蕉
芭蕉の風流は私にはないので、炬燵にもぐり込む。いざさらば、雪見酒としゃれのめしたいところだが、あいにく禁酒。節分の豆まきもせず、私のアトリエには、日本じゅうの鬼さんがお集まりくださったものと思われる。
奈良時代の奴婢(ぬひ)の食生活はひどいものだったらしい。正倉院の文書に、東大寺で使役していた奴婢に食べさせていた副食物の記録があって、ミソ、ショーユの外には、わずかな量のヒジキ、調味料はおスだけという。『万葉集』(巻16)に、
香(こ)り塗れる塔にな寄りそ 川隈の尿鮒食(はめ)るいたき女奴
という歌があって、当時の下層階級の人々の食生活がわかる。
官吏が出張すると、一日、一升の酒が給せられた。現物給付だが、むろん、にごり酒。まさか、毎日、どぶろく一升を飲んだわけではないだろう。生活費に現金に換えたか、一部分を闇市に流したか。
雪だるまを作るほどの積雪ではない。雪まろげ。雪ころばし。こんなことばも死語になった。私の住んでいる界隈も過疎化、少子化がすすんで子どもたちの姿も見かけない。
つまりは、雪投げをする子どもも見ない。雪合戦などとっくにすたれてしまった。
そなさんと知っての雪のつぶてかな はぎ女
こういう雪つぶてなら、ぶつけてもらいたいものだが、私には「はぎ女」のような恋人はいない。
さはさりながら、二月、花の咲くのも間近い。
万葉集にはなといえば梅の事ぞと定められし、桜を花と称するははるかに後の事ぞかし
ご存じ春水、『梅暦』の書き出し。