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 1411年、「知識人」の指導者が、カンブレーの司祭によって告発され、断罪された。ジル・カントール、および、ヒルデルヘッセンのウィリアムという。
 カンブレーの司祭は、修道女、ブレマルダンの説く「天使の愛」を堕地獄のものと糾弾した。そして、ジル、および、ウィリアムの両名が、ブレマルダンと関係があったと断じた。
 異端審問官はこの二人をきびしく糾問して、ふたりがブレマルダンと淫らな行為にふけったと認めさせた。むろん、はげしい拷問の結果であった。

 ジル・カントールは、聖霊が訪れたことを告白し、キリスト教の四旬節、ほかの大斉日を守らぬように、この聖霊から命じられたと語った。
 ウィリアムは、イエスが十字架にかかって死んだのだから、告白、贖罪、人類に対する罪の赦しはいっさい無益になったと語り、よってこれらの秘蹟は放念してもよい、とのべた。しかも、聖霊にみたされた人間は、聖職者よりもただしく聖書を読みとくことができるし、人智を超えた説教ができると主張した。

 こういう神学的な問題になると、私にはわからないことばかり。

 ただ、私にもわかるのは――「知識人」の思想が、キリスト教異端のベギン派の修道院の思想とかさなりあっていることである。「知識人」の行状、教理を記録したピエール・ダイイの記録では、性行為をこばんだ仲間の女は、みんなから辱めをうけたという。この集団では、性交は、祈りにひとしい霊的行為と見なされていた。

 ただし、ウィリアムは、仲間どうしの乱交を外部に秘匿するように言明したという。
 人間の考えることは、あまり変わらないらしい。