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 最近は中国映画を見る機会がない。たまに映画雑誌でスターたちの消息を読む。

 徐 静蕾の記事。少女の頃から父に聞かされていた言葉があるという。

  腹有詩書気自華  腹に詩書あらば おのずから華やぐ
「詩書」は、詩集や書道という意味ではない。日頃、すぐれた詩や、すぐれた本を読んでいれば自分の内面がゆたかになる。そうすれば、われから輝きをましてゆく。そういうことだろう。
 いいお父さんだなあ。

 最近の私のご贔屓女優は、範 冰冰、李 冰冰。
 ふたりとも美貌だし、おなじ名前なので間違えそうだが、範 冰冰は、ロングヘアー、ハリウッディーなアイメーク。このまま外国映画に出ても通用するだろう。
 李 冰冰のほうは、かつての<チャイルド・ウーマン>といった可憐な小女人。

 こういういいかたがはじめから無理だが・・・徐 静蕾は、藤原 紀香タイプ。範 冰冰はカサリン・ゼタ=ジョーンズ/タイプ。李 冰冰は、さて、どういったらいいか。
 一昔前なら、<female female>といった女優さん。

 美しい映画女優の写真をながめながら、うろおぼえの漢詩を思い出す。

  影中金鵲飛不滅  影中の金鵲(きんじゃく) 飛びて 滅(き)えず
  台下青鸞思独絶  台下の青鸞(せいらん) 思い ひとり 絶えつ
 以下、拙訳。映画雑誌のブロマイドのスターたちは、私から飛び去っても、スクリーンから消えることはない。美しい女たちのことを追っている私の孤独な思いはやまない。

 李白先生はニヤニヤなさるだろうな。