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 久しぶりにマリア・グレギーナを聴いた。
 オペラではなく、ロシア歌曲であった。

   きみといっしょにいて
   黙って きみの 瑠璃色の眸(め)に
   心を沈めるのは なんとたのしいことか

 ルィンジンの詩、グリンカ作曲。

   私はあのすばらしい一刻をおぼえている
   私の前に きみはあらわれた
   たまゆらの 幻のように
   聖らかな 美の化身のように

 プーシュキンの詩。私は、自分の「たまゆらの 幻」を思い出す。

   一生のうちに ただ一つの幸福に
   めぐり逢うのが 私のさだめ
   その幸福は リラの花のなかに住んでいる
   みどりなす その小枝
   なよたけの 香り
   ここに 私の幸せが花ひらく

 これはチャイコフスキー。詩はE・ベケートワ。