最近は、「お笑いブーム」だそうである。
そういえば、若手の喜劇人がぞくぞくと登場して人気を集めている。ほとんどが、吉本系の芸人で、テレビに出るようになって人気が出て、テレビのバラエティで活躍している。
若手の、素質のいい落語家も登場してきた。
「お笑い」を考えるとき、流行語を見れば、その性質が直ぐに見えてくる。
たとえば……わざと、お古いところをあげるのだが、
「ウハウハ」、「ハヤシもあるでよ-」、「ん、やめて!」、「おぬし、やるな」。
これは「アッとおどろく為五郎」や、「オンドリャー」、「アサー」の時代。
翌年(1971年)になると、「シラケる-」、「メタメタ」、「フィーリング」。
「古い奴だとお思いでしょうが」、「ウーマン・リブ」、「がんばらなくちゃ」に重なってくる。
そして、「若さだよ、ヤマちゃ-ん」、「ワレメちゃん」、「総括する」時代。
「あっしにはかかわりのねえことで」、「流れを変えよう」ということになる。
そして、1973年になると、「じっと我慢の子であった」、「いったい日本はどうなるのであろうか」、「狭い日本、そんなにいそいでどこに行く」という不安がひろがってくる。
私たちは、いつの時代にも、笑いに飢えている。だから、いきのいい芸人がたくさん出てきたほうがいい。
芸人もたくさん出てくれば、当然ながら淘汰される(消える)やつも、たくさん出てくる。すでに、消えてしまった連中も多い。
私は、ここでも「古い奴だとお思いでしょうが」、ある女優のことばを思い出す。
「誰も書かなくなっちゃったわ――真劇を。(舞台に)出てくるのは、くだらないギャグばっかり」
バーバラ・スタンウィック。ハリウッド黄金時代の大女優のひとり。
1953年、映画ジャーナリズムの大御所だったヘッダ・ホッパーのインタヴューで。
彼女のことばに苦い感慨がこめられているのだが、笑いをもとめる一方で、こうした苦さは、たえず私たちの内面にひろがっているのだ。
近頃は、「お笑いブーム」だそうである。
おあとが、よろしいようで。