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本所、小梅に住んでいた。
その界隈は、どこか江戸の情調が残っていた。すぐ近くに、幼い頃の堀辰雄が住んでいた家があったり、三囲神社、言問橋が眼と鼻のさき。
隣りに朝鮮人の家族が住んでいて、いつも美少女の姉妹を見ていた。太平洋戦争がはじまってその姉妹の一家は引き揚げて行った。
美少女たちのおもかげだけが残った。

→「若き日の回想」