1893

コロナ・ウイルスがようやく艾安(がいあん)に向かいはじめた頃、ふと心をかすめる詩の一節があった。

獨往 路難盡   どくおう みち 尽きがたく
窮陰 人易傷   きゅういん 人は いたみやすし

唐の詩人、崔 署(さいしょ)詩の一節。以下、拙訳。

一人旅する よるべなさ
冬も終わるか 心身にしみる寒さよ

崔 署(さいしょ)については何も知らない。

たいして才能もないままにもの書きを志した蒙鈍(もうどん)の身にして、そろそろ決着がついてもおかしくない頃合い。おまけにコロナ・ウイルスなどという不吉な災いが時代を覆いつくしているとなれば、崔 署の思いがおのずから重なってきてもさして不思議ではない。