1889

暑い日がつづいていた。

本を読む気になれない。暇つぶしに、短い格言めいたものを読むことにしよう。有名人のインタヴューから拾ったり、気になった片言隻句。

たとえば、アルフレッド・ヒチコック。

彼女たちは、ほんとうのレディに見える。なりゆき次第で、寝室ではタイガーになる。ブロンドの女は、いざとなったらいともおしとやかにやってのける。

私は、キム・ノヴァクや、ティッピィ・ヘドレンを思い出しながら、こんなことばを読む。ふたりとも、ヒチコックがきらいになって、映画から去って行った女優。

   娼婦はレディのように、レディは娼婦のようにあつかえ。

これはウィルソン・マイズナーのことば。(ヒチコックとは無関係だが。)

ヒチコックの演出にはいつもそんな態度が感じられたっけ。