1861

私には文芸としての川柳のおもしろさがわからない。
それでも、気に入った川柳はいくつもある。

深川で買って行かうと 汐干狩り

真 垣

赤旗を前垂れにする 下の関

めで度    (文政時代)

大江戸の月は 須磨より 明石より

水 魚    ( 〃 )

見るでなし見せるでもなし 緋縮緬

老 莱    ( 〃 )

二の腕を反故染(ほごぞめ)して二十七

綾 丸  ( 〃 )

いずれも文政期の川柳。せいぜいこの程度の川柳しかわからない。それでもこんな川柳を見つけて、ニヤニヤしたり、ニンマリしたり。

もっとむずかしいのは、「武玉川選」。のちに前句づけの狂句に移行する句集だけに、五七五に七七の句をつけても、私にはわからないものばかり。
いろいろと考えて、やっと、落ちや、うがちにニヤニヤする。

去られてもの 去られてもまだ 美しき

うつくし過ぎて 入れにくい傘

朝顔の 一夜指さす 天の河

ともし火も吹き消しやうで恋になり

軽井沢 ほどほどに出る 物着星

なんとかわかる句にぶつかると、それがうれしくてニンマリする。コロナ・ウィルス感染の時期に、大昔の川柳を読むなんざ、いい気分だね。