私には文芸としての川柳のおもしろさがわからない。
それでも、気に入った川柳はいくつもある。
深川で買って行かうと 汐干狩り
真 垣
赤旗を前垂れにする 下の関
めで度 (文政時代)
大江戸の月は 須磨より 明石より
水 魚 ( 〃 )
見るでなし見せるでもなし 緋縮緬
老 莱 ( 〃 )
二の腕を反故染(ほごぞめ)して二十七
綾 丸 ( 〃 )
いずれも文政期の川柳。せいぜいこの程度の川柳しかわからない。それでもこんな川柳を見つけて、ニヤニヤしたり、ニンマリしたり。
もっとむずかしいのは、「武玉川選」。のちに前句づけの狂句に移行する句集だけに、五七五に七七の句をつけても、私にはわからないものばかり。
いろいろと考えて、やっと、落ちや、うがちにニヤニヤする。
去られてもの 去られてもまだ 美しき
うつくし過ぎて 入れにくい傘
朝顔の 一夜指さす 天の河
ともし火も吹き消しやうで恋になり
軽井沢 ほどほどに出る 物着星
なんとかわかる句にぶつかると、それがうれしくてニンマリする。コロナ・ウィルス感染の時期に、大昔の川柳を読むなんざ、いい気分だね。