ここで、私の「現在」に戻るのだが――
もう誰もおぼえていない映画だが、「ジュリー&ジュリア」(ノーラ・エフロン監督、2009年)のなかで、ヒロイン、「ジュリー」(エイミー・アダムズ)は、毎日、ブログを書いている。
「ジュリー」は――半世紀も昔に、パリでフランス料理を勉強して、アメリカ人のために、524ものフランス料理のレシピを書いて、ベストセラーを出した「ジュリア・チャイルド」(メリル・ストリープ)にあこがれて、1年間かけて、そのレシピを作ってみる。そのプロセスを、おもしろくブログに書き続けるのだが、途中で、ブログを書くことは――「虚無の空間に書き送っている感じ」に陥る。そんな娘の将来を心配した母親に、
あんたが、そんなブログを書いても、書かなくても、誰も気にしないよ。
とあびせられる。
いろいろなセリフを思い出す。
「大いなる眠り」のハンフリー・ボガート。
Another hour, another bottle――another dame?
むろん「フィリップ・マーロー」のセリフ。
老齢に達した作家が、何かの事象をとらえて、自分の理解なり洞察を日記に書きとめる。そこには、宮さんのように老年の叡智が輝くかも知れない。ただし、私のブログにそんな叡智が輝くはずはない。
ただ、これから先の「中田耕治 ドットコム」では、できるだけいろいろなテーマをとりあげてみたいと思う。できれば、宮さんが生きていたら相好をくずしてよろこんでくれるようなテーマを書きとめておきたい。
まさか、宮さんのような天衣無縫な「日記」などは書けないけれど。
(再開 15)