1830

こうして、私も宮さんの「日記」に登場することになったが――ひとまわりも年下の私が宮さんに親しくしていただいたのは、宮さんの敬愛する芸術家たちに私もまた、敬意と親しみをもっていたからだった。

ここで、宮さんのあげている芸術家たちを思い出してみよう。

トーマス・マン、ヴァルター・ベンヤミンについては、残念ながら、私はそれほどよく知らない。アナイス・ニンは当然よく知っている。
ジェイムス・ジョイス、T・S・エリオット、ガートルード・スタイン。
「ユリシーズ」は、私にはむずかしい。ガートルード・スタイン。いずれもむずかしい作家だが、私もヘミングウェイに関連していちおう読んできた。
エズラ・パウンド、リルケ、ナボコフ、カフカ。このあたりも、なんとかわかるつもりでいる。
モーム。この作家は、ほとんど全作品を読んだ。おなじように、スコット・フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ヘンリー・ミラー、これも全部読んだ。シルヴィア・ビーチは、パリに行ったとき、何度も通った。今でもそのとき買えなかった本のことを思い出す。ピカソ、モジリアーニについては、何度も書いている。シャガール、イサドラ・ダンカン、ストラヴィンスキーたちについては書く機会がなかった。
それでも、宮さんと語りあうには、いちおうじゅうぶんな知識をもっていたと思っている。

宮さんも、私と語りあうことで、好きな話題がたくさん出てきたので、日記にせっせと書きつづけたのだろう。
(再開 12)