1977年8月3日(月)
「日経」、吉沢君に連絡して、「東映」の「宇宙戦艦ヤマト」を見に行った。
このアニメについて、日記には書かない。この作品は、最近の日本映画として、きわめて重要な作品と見ていいのではないか。あとで、じっくり考えてみよう。
吉沢君と一緒に、「レバンテ」で遅い食事。話は、もっぱら「宇宙戦艦ヤマト」に集中した。
「実業之日本」に寄って、レジュメ、2本。
久しぶりに神保町に行く。「北沢」の裏に出て、交差点に向かって歩いていると、思いがけず、磯田 光一に会った。
「やあ、久しぶりだね」
お互いに久濶を叙するという感じで、「コ-ヒ-苑」でしばらく雑談。私は、若い批評家のなかでは、磯田君にいちばん好感をもっている。
お互いに批評家なので、話題がつぎつぎに変化する。永井 荷風のこと、作家の死について。吉田 健一の死について。
私としては、スウィフトについて聞きたいことがあったのだが、いろいろと話をしているうちに忘れてしまった。なぜ、スウィフトなのか。磯田君は、最近のエッセイで、吉田 健一がスウィフトにふれていた文章から、臼井 吉見の「事故のてんまつ」を論じていたので、心に残っていたからだった。
あまり長く時間をとってはいけない。磯田君が病弱と知っているので。
最近の磯田君は、風俗資料を集めている、という。
「どういうものを?」
聞こうと思ったが、遠慮した。
「一誠堂」で1冊。「松村」で1冊。
夕暮れ。
「山ノ上」で、「南窓社」の松本 訓子さんと、原稿の打合せ。
井上 篤夫君に、アンサニ-・ロ-ムを。大村君に渡す本は、明日、速達で送ること。
帰り、西千葉で下りた。富安 夘八郎さんに電話。お焼香をさせていただく。
しばらく、福岡 徹(富安 徹太郎)を偲んで、話をする。
夘八郎さんは、「軍神」を文庫に入れてほしいというご意向のようだった。
1977年8月4日(火)
昨日、手に入れた本は「サヴォナロ-ラ」。もう1冊は、18世紀からのヨ-ロッパの王室に関する資料。
ロマノフ家のマリ-大公妃、ルクセンブルグのマリ-・アデライドを、系図でたしかめた。系図を見ていて、ルクセンブルグ大公、アドルフスの弟、ニコラス(1832~1905)が、メルレンブルグ伯爵夫人、「ナタリ-・プ-シュキン」と結婚している。さっそく、アンリ・トロワイヤの「プ-シュキン」を調べた。プ-シュキンの妻だった「ナタリ-」と混同した。詩人の「プ-シュキン」は、1837年に死んでいるので、「プ-シュキン」の娘かと思った。
私は、外国の人名から、すぐに肖像がうかぶような研究者ではないので、いつも、苦労している。