1769 〈1977年日記 16〉

1977年5月30日

数日前に読んだ新聞記事が心に残っている。

女優、ホ-ン・ユキのこと。
木の実ナナが、急性胆嚢炎で手術を受けることになって、「日劇」6月公演のミュ-ジカル「踊る幽霊船」の主役に起用されたラッキ-な女優である。
父がアメリカ人、母が日本人、現在28歳。コ-ラス・グル-プ「シュ-クリ-ム」から、49年、テレビに進出した。現在、TBSで「かあさん堂々」に出演。3月に「西武」で公演した「夕食は外でしたら?」に出ていた。
「東宝」としては、木の実ナナ主演のミュ-ジカルという企画で出したプランだが、この突然の交代は、かなりダメ-ジが大きいと思われる。ただし、ホ-ン・ユキが主役に抜擢されても、別に意外な気はしない。私はホ-ン・ユキの出た「夕食」を見ただけだが、この女優の素質、その姿態に惹かれた。

澁澤 龍彦さんから「思考の紋章学」を贈られた。早速拝読する。丸谷 才一さんに出した礼状が戻ってきた。住所が変わったのか。
「読売」、北村さんから電話。アイヒマンに関して。県立図書館の竹内 紀吉君に調べてもらう。
「日経」ショッピング、秋山さんから原稿の依頼。児玉 品子さんに電話。
雑誌、週刊誌、新聞、外国の雑誌、10種が届く。すぐに読みはじめる。

 

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1977年5月31日

午後2時半、「ジャ-マン・ベ-カリ-」で、「読売」、北村 佳久さんに「あとがき」の補足分をわたす。しばらく雑談したが、部数は6千部らしい。ちょっと少な過ぎると思った。私としては不満を述べるわけではない。そろそろ翻訳から足を洗ったほうがよさそうな気がする。

「実業の日本」、増田さんに原稿をわたす。社長の令息で、「週刊小説」の編集長になった。
「お若いのに、たいへんですね」
というと、柔和に笑いをみせて、
「若く見えますけれど、ほんとうはそんなに若くないんですよ」
という。好感のもてる人だった。最近の出版ジャ-ナリズムの世界にも、世代交代が見られて、若い編集長、社長の時代がきている。
「映画ファン」の萩谷君に原稿をわたす。萩谷君はすぐに帰った。
下沢 ひろみがきたので、「メイデイ40000フィ-ト」(ロバ-ト・バトラ-監督)を見た。76年、CBSが放映したTVム-ビ-で、航空パニックもの。スト-リ-は「大空港」や「エアポ-ト77」を見ているので新味はない。出演者もデヴィッド・ジャンセン、レイ・ミランド、ブロデリック・クロ-フォ-ド、クリストファ-・ジョ-ジといった古株ばかり。なつかしや、ジェ-ン・パウェルが機長夫人になって出ている。

「山ノ上」で、「集英社」の永田 仁志君にあう。私が書く予定の「カテリ-ナ・スフォルツァ」がまったく進捗していないので、どうなっているのか、と心配してくれた。「カテリ-ナ」に着手したくても、6月はさらに多忙になるので、ちょっと手がつけられない。
講義。Y.T.鳳仙花。

 

 

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