知ってはいるけれど、ほとんど使ったことのない言葉。たとえば、ピカいち。
今月の女芝居じゃ、赫子がピカいちだよ。
(吉原の)XX家の中じゃ、XXがピカいちだよ。
子どもの頃そんな言葉を聞いた。「ピカいち」という基準は、「女役者」をはじめ、ひろく女の品定めに使うのか、と思った。
もともとは花札からきている。配られた手札を見て、一枚だけ役札が入っている。もっとつよい札の、ボーズ(坊主)、小野 道風、鳳凰などのほかに、青タン、赤タン、イノシシ、シカ、チョウ。あとは、素(す)札ばかり。そんなときに、この役札をピカいちという。
漢字では「光一」と書く。
たちまち、知人を思い出した。批評家の磯田 光一。演出家の木村 光一。
しばらく、ふたりのことを考えた。それは自分のことを考えることでもあった。