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「SMASH 1」の「第14話」。「ボムシォル」ボストン公演の前夜、アンジェリカ・ヒューストンが、ホテルのラウンジで「セプテンバー・ソング」を歌う。けっしてうまい歌ではないが、それでも大女優の風格といったものを感じさせた。
「SMASH 2」でカットされたシーンの一つに、アンジェリカ・ヒューストンがシャンソンを歌う。フランス語だが、これがいい。

「SMASH 2」で、いちばん失望したのは――ライザ・ミネリ。

「キャバレー」(ボブ・フォッシー監督/72年)のライザをおぼえている人は、「SMASH 2」のライザに何を感じたろうか。

「ボムシェル」の演出が、「デレク」がおりて「トム」(クリスチャン・ボール)に交代する。上演する劇場も「ヴェラスコ劇場」にきまって、「トム」の演出が、なんとか恰好がついてくる。
ところが、主演女優、「アイヴィー」の誕生日を忘れる。「トム」はあわてて、誕生日のビッグ・サープライズ、「アイヴィー」が尊敬する歌姫、ライザ・ミネリの歌をプレゼントする計画を考える。
(これは「1」の「第13話」――主演女優「レベッカ」(ユマ・サーマン)が、演出家「デレク」の誕生日に「マリリン」の歌、「ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー」を歌うシーンとコントラストになる……はずだったが。)
「アイヴィー」は、その晩、親しい仲間とパーテイーをする予定で、「トム」をオミットしている。

「トム」と「アイヴィー」が食事しているレストランに、ライザ・ミネリが姿をあらわす。驚いた。ライザ・ミネリは、整形手術のせいで表情が死んでいるばかりか、声に問題があった。

「SMASH I」のゲスト・スター、まだ未成年のニック・ジョナスが、ドラマにうまくからんでいたのに、「2」では、「ヴェロニカ」(ジェニファー・ハドソン)もドラマの途中で消えてしまうし、ライザ・ミネリはお義理で出てきたようなものだった。

私は、ライザにあわれを催した。整形手術による表情、雰囲気の違いを考えても、年齢を重ねてきた女優の内面の美しさなど、どこにもなかった。
もともと、「アイヴィー」にささげる歌、「ラヴレター・フロム・タイムズ」の内容が空虚なものだったので、その空虚にライザ・ミネリの衰えが重なっている。

「SMASH 1」が、「カレン」のサクセス・ストーリーだったとすれば、「SMASH 2」は、「アイヴィー」のサクセス・ストーリー。ただし、「トニー賞」の発表といっても、まるっきり緊張もないし、サスペンスもない。それに、ブロードウェイの演劇人が集まる豪華な雰囲気もない。
最後に、「カレン」と「アイヴィー」のデュエットを含むダンス・シーンで、おしまい。世はすべてこともなし。めでたしめでたし。あきれた。