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このエッセイの筆者は楽しそうに書いている。

文章を書き終えて、「しめくくり事典」を開く。関連する項目に目を通し,ヒントになる結びを見つけ、しめくくりの文章をさらに磨きをかける。これも結構楽しい自添削作業だ。難しいと思っていた結末の文章を書くのが、少し楽になっていく。

文章に上達しようと思ったら、まず他人の文章を模倣すること。もっとも効果的な方法は「書きうつす」ということ。

この助言はたぶん正しいだろう。志賀 直哉に私淑していた作家の尾崎 一雄は、まだ無名の頃,志賀 直哉の作品を筆写して自分の文体を作りあげて行ったという。
してみれば、他人の文章を模倣することは間違いではない。
ただし、「新聞や雑誌で読んだ上手なしめくくりの部分を採集し、キーワードで分類してパソコンに入力した」ところで、はたして参考になるだろうか。かつは、文章が上達するだろうか。

どうすれば文章が上達するだろうか。もし、私がそんな質問を受けたら――他人の文章の模倣はあまりすすめない。感銘を受けた結びの文章に出会ったら書きうつしてストックしたところで、実際には役に立たないだろうと思う。
(つづく)