バークリーに行った頃の私は、映画女優、マリリン・モンローに関してモノグラフめいたものを書いていたし、もはや「戦後」でもなかった。私は、最初のアメリカ旅行中に、オスカー・ワイルドの戯曲をかかえて、ホテルで少しずつ訳していた。(これは、帰国後すぐに内藤 三津子女史の担当する「オスカー・ワイルド全集」(出帆社版)におさめられた。)
バークリーに行った頃の句作を。
春寒に 日替わりの活動写真見て
フラッパーのサイレント喜劇に 春たけて
メリケンの活動写真に 残る花
霧のシスコ 坂の残花の 散るばかり
はるばると来て見つ 花の水着美人
サイレントの笑(え)まう女に 昼の月
オペラを見て、サンフランシスコの、月の傾きかかった狭い街をとぼとぼと帰ってくるとき
劇場の灯火消えて 春の街