1977年のメモ。さっそく読んでみたが、今となっては、まるでおぼえていないことばかり。
それでも読んでいるうちに、なんとなく思い出したが、他人の書いたものを読んでいるような気がした。
1977年、私はけっこう多忙だったらしい。
5月2日の「メモ」によると、
とにかく電話が多く、「二見」の長谷川君、「牧神社」の萩原君、「映画ファン」など。「南窓社」の岸村氏に会う日時を変更してもらう。
植草甚一さんの「J・J氏の男子専科」を読む。虫明亜呂無の解説。
ほかに読んだもの。中村 光夫の「雲をたがやす男」。これはくだらない。「七七年推理小説代表作選集」。斉藤 栄「河童殺人事件」。
ヘラルド「テンタクルズ」の特別試写。
夜、チャプリンの「独裁者」を見る。これで三度目。ひそかに疑う。映画人としてのチャプリンは、この作品から衰退を見せているのではないか。
私はこの試写を見るために、「ヘラルド」に行ったはずだが、「テンタクルズ」の内容はおぼえていない。この映画は公開されたかどうか。
すぐに気がつくのは、私の「メモ」に映画についての記述が多いこと。私は「日経」の映画評を書いていた。だいたい週に2本、多いときは4本ぐらい書いていたと思う。私の担当だったのは吉沢 正英(日経・文化部)君だった。
1977年当時、たいした映画も公開されていない。「キャッシュ」、「キャリー」、「スター誕生」。 ポール・ニューマン、バート・ランカスターの「ビッグ・アメリカン」(ロバート・アルトマン監督)、ピーター・フォンダ、ユル・ブリンナーの「未来世界」、ジャクリーン・ビセットの「ザ・ディープ」、ライザ・ミネリの「ニューヨーク・ニューヨーク」ぐらいしか記憶にない。
あとは「ドッグ」や「スクワーム」、「スヌーピー」、「ベンジー」、そんな映画ばかり見せられていた。
(つづく)