(7)
「SMASH」に、二人の名女優が出ている。
バーナデット・ピータース。日本ではほとんど知られていない。
1944年、イタリア系移民の子としてニューヨーク生まれ。おなじイタリア系移民の血をひくロバート・デニーロより1歳年下。シルヴェスター・スタローンより2歳上。
5歳のときから、テレビに出演。以後、舞台、ナイトクラブ、TV、映画に出た。
6〇年代から、ブロードウェイ・ミュージカルに出て、1968年、「ドラマ・デスク賞」、アンドリュー・ロイド・ウェッバーの「歌とダンス」でトニー賞を受けた。
日本では公開されなかった映画だが、私は「W・C・フィールズと私」(1973年)をアメリカで見た。個性のつよい女優、ヴァレリー・ペリンが出た映画だが、はじめて見たバーナデットという女優の凄さに気がついた。
私たちは――わずかに「アニー」(ジョン・ヒューストン監督/1982年)のバーナデットしか見られない。
「SMASH」では「アィヴィー」の母親、「リー・コンロイ」として登場する。
もう70歳近くなのに、40代にしか見えない(失礼!)細おもてのオバサマが出てきて、稽古場でみんなに歌ってみせるエナジーがすごい。
(この最後のシーンが、「SMASH」の最後のシーンにつながる。つまり、伏線になっている。)
「SMASH」に出ているもうひとりの名女優は、アンジェリカ・ヒューストン。
バーナデット・ピータースが出た「アニー」の監督、ジョン・ヒューストンのお嬢さん。お嬢さんといっても、こちらも、もう60歳のオバサマ。ジョン・ヒューストンが、アンジェリカの母親と離婚したとき、アンジェリカ、11歳。
「SMASH」で、離婚でモメている夫に、カクテルを3回もブッかける。きっと溜飲がさがったにちがいない。(笑)
「SMASH」の第12話で――映画スターの「レベッカ」(ユマ・サーマン)にいう。「わたしも、男でいろいろ苦労してきたから」という。思わずニヤニヤした。アンジェリカは、ジャック・ニコルソンと、17年間、実質的に夫婦関係にあったが、アカデミー賞をもらってから、ジャックと大ゲンカして別れている。
はじめてアンジェリカを見たのは「郵便配達は二度ベルをならす」(1981年)。私は原作を翻訳したので、この映画を何度も見た。すごい大女という印象が残った。
しばらく泣かず飛ばずだったのに、父のジョン・ヒューストン監督の「女と男の名誉」(1985年)で、アカデミー賞/助演女優賞をさらってしまった。
その後も「敵、ある愛の物語」(1989年)、「グリフターズ 詐欺師たち」(1990年)とつづけて、アカデミー賞にノミネートされている。
どうして、こんなことをおぼえているのか。映画、「郵便配達は二度ベルをならす」公開とほとんど同時に「死の接吻」と「ネイキッド・タンゴ」が公開されたのだった。
このブログを読んでくれる人なら、私が「死の接吻」と「ネイキッド・タンゴ」を気にしていた理由は想像してもらえるだろう。)
それはさておき――
「SMASH」のアンジェリカと、「バーレスク」のシェール、どちらを選ぶかと考えるのと、「カレン」と「アイヴイー」のどちらを選ぶか。どちらもむずかしい。
どっちを選んでも、私の趣味がバレそうな気がする。ウシシ(笑)