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ブロードウェイ。
タイムズ・スクェアにあふれる絢爛たる光の洪水。
その輝きのなかに、無数の挫折、栄光が渦巻いている。
2013年6月9日、アメリカ演劇界で最高の栄誉とされる「トニー賞」の発表と授賞式が行われた。
ドラマ部門とミュージカル部門に分かれているが、今年のミュージカルは「キンキーブーツ」が最優秀作品賞ほか、オリジナル作曲賞など、6部門を独占したという。
不況で倒産寸前の靴工場で、再建をめぐってのさまざまな人間模様を描いたコメディ。
オリジナル作曲賞は、シンディ・ローパー。
受賞したシンデイは、「私を受け入れてくれたブロードウェイに感謝したい」とスピーチした。このことばの重さは、シンディ・ローパーを知っている人にはすぐにわかるだろう。
この「キンキーブーツ」のプロデューサーの一人が日本人だという。ブロードウェイの輝きのなかに日本人の名が輝いたことに私は感慨を催した。日本の女優がミュージカル、「シカゴ」の舞台を1カ月つとめた程度のことではない。
このプロデューサーの胸にも「私を受け入れてくれたブロードウェイに感謝したい」という思いはあったに違いない。