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宮 林太郎さんの手紙に私は感動していた。
この手紙は、さらにつづく。


中田さん、ぼくが死んだときにはローソクを一本もってきてください。
それに火をつけてください。それをぼくの一生だと思ってください。ローソクは小さいのでも大きいのでも適当に。
ぼくには関係がないがローソクは燃える。あのローソク、ぼくには意味がないと思っていたが、あれでなかなか素晴らしい。彼は燃えるのです。それがやがて消えるのです。その間あなたはそれを見守っていてください。まあ、それぐらの時間はあるでしょう。
それが一人の男の人生です。燃えて消えてゆく、そいつです。燃えているあいだは浮気もする。悪事もする。やがて消えてゆきます。どうも僕は説教くさくなってきた。まあ、ローソクは持ってきてください。それに火をつけてください。そこで、変な俳句、

一本のローソクなりし我が身かな

愚かにも燃えてつきたる我身かな

 

 私は、お彼岸にはローソクを一本もってきて、それに火をつけて、燃えつきるまで、本を読むことにした。申しわけないが、宮さんの本ではない。真喜志 順子が訳した本で、日本人の辞世が引用されていた。
宮さんの俳句から、私は別のことを考えはじめた。     (つづく)