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(つづき)
サリー・ホッグズヘッド著、「魅きよせるブランドをつくる7つの条件」(PIE刊)を読んだのと、同時期に、最近、人気の高い作家、山口 路子の「恋に溺れて女になる」(中経文庫/’12.8.刊)を読んだ。読んだのは偶然だが、この本にも女が男を魅きつける条件がいろいろと出てくる。
サリー・ホッグズヘッドと、山口 路子の本をつづけて読んで、アメリカ的な乾いたプラグマティズムと、アメリカをよく理解しながら、日本の女性らしい「濡れたもの(wetness)」の違いが感じられて興味深かった。

山口 路子は、「ココ・シャネルという生きかた」で知られている作家だが、彼女のとりあげるさまざまな芸術家たちは私にも親しい人が多かった。たとえばマリリン・モンロー。女史の近作、「マリリン・モンロー」の「あとがき」に、わざわざ私の名をあげていただいて恐縮している。

山口 路子はこの著書で、みごとにマリリン・モンローの魅力を描き出しているのだが、たまたま、サリー・ホッグズヘッドもマリリン・モンローにふれていた。

心理学者のディヴイッド・ヒューロンは――マリリン・モンローの声を「濡れ
た声(wet)」と表現したのです。(中略)
マリリン・モンローの濡れた声は、快楽と包容力を伝えます。加えて、彼女の声は「気音」であるとヒューロンは説明します。モンローは声帯を通る空気の量を増やし、囁くように喋っているのです。私たちは、隣の人にひそひそ声で話しかけるとき、声に空気を含ませています。モンローの場合は、意図的に、自分のブランドイメージの一部である濡れた声というシグナルを採っていたのです。ステージ上でも「ピロー・トーク」の効果を利用し、観衆の一人ひとりと肉体的に親密な関係にあるような喋り方で話しかけたのです。(聴覚的にエロティックな彼女の傑作、「ハッピーバースデイ・ミスター・プレジデント」を頭の中で再生してみてください)。
(「魅きよせるブランドをつくる7つの条件」)P・94.


この心理学者の説では、「濡れた声」は、暗黙のうちに相手を自分の身近に誘い込む、という。「ねえ、こっちにきて。すごくおもしろいことがあるの。いっしょにどう?」

マリリン・モンローにそういわれたら、誰だってメロメロになるだろう。(笑)