とにかく暑い。例年、猛暑が続いているのだから、きびしい暑さにも慣れている。それでも暑かった。
2012年8月。連日、猛暑。
私は、ただ、ロンドン・オリンピックを見ていた。
オリンピックのどの競技をみても、かならず日本の選手の活躍を期待している。実際にはそのスポーツに関して何も知らないのに、日本の選手が出ていれば、ただもう勝ってほしいと思う。まことに単純な民族主義者になっているのだった。
競技についても、当然、いろいろな感想を抱く。しかし、そのスポーツに関しての知識がないのだから、感想も書けない。
たまたまパソコンが故障したため、以前に使っていたワープロを引っ張りだして書いてみたが、何を書いても新聞記事のレジュメのようになる。あきれた。
そんなものを書いても仕方がない。
ロンドン・オリンピック。あまり人の書かなかったことを書いておこう。
ロンドン・オリンピックの開会式の冒頭に、「ウィンストン・チャーチル」が出てきた。これには驚いた。まさか、こんなところにチャーチルが出てくるとは思わなかった。
よく見ると、映画、「英国王のスピーチ」で「ウィンストン・チャーチル」を演じたテイモシー・ホールズではないか。たいした名優でもない。
つづいて、「バットマン」らしいキャラクターが出てきて、これまたびっくり。そして、ヘリコプターに乗った女王陛下の身辺を「OO7」が警護している!
「ジェームズ・ボンド」は、ダニエル・クレイグ。
驚いたのは、次のシーン。
にこやかに機内に姿を見せたご高齢のエリザベス二世が、次のシーンでは空中にもんどり打って飛び出し、スカイ・ダイヴィングを……
まさか女王陛下が、パラシュートでご降下遊ばされるとは思ってもみなかった。思わず、目を疑った。そして――笑った。
そのエリザベス女王がロンドン・オリンピックの会場に臨御あそばされて、開会宣言をなさる、という演出。イギリスらしい、ひねりのきいたユーモア。ヒチコックを思い出した。
これには、笑ったね。イギリスらしいユーモア。外面はニコリともしないが、世界じゅうを驚倒させるようなユーモア。
日本では絶対に考えられない。こんな「演出」を考えたヤツは、非難囂々、たちまち、クビになる。それどころか、日本のオリンピック委員会や、宮内庁の連中は、恐懼して、骸骨を乞いたてまつる、という次第。新聞も騒ぐだろう。(「骸骨を乞う」なんてことばは、もう辞書にも出ていないだろうなあ。)
私は、この瞬間、ロンドン・オリンピック開会式に好意をもった。
その直後、見過ごすわけにいかないことが起きた。
(つづく)