しばらく前に「スリット・アート」について書いた。
いわば「スリット・アート」趣味である。(安いポンピエを収集する趣味のこと)
どうして、そんな趣味をはじめたのか。
私は、女子美術大の先生だったことがある。
相模原に校舎がある。本館のホールのスペースが、ギャレリーになっていて、毎日のように生徒たちの展示があった。
本格的な油絵の展示もあったし、コンセプチュアル・アートもある。とにかく、毎日、なにかしらの制作が展示されるようだった。
学校側に申請すれば、かんたんに展示ができるようだった。だから、学年や専攻、クラスも違う生徒たちの個展や、数人のグループの展示もあった。
その展示は、ときには油絵で自分のヌードを描いた作品や、生徒たちがお互いをモデルにしたデッサン、クロッキーなどもあった。むろん、かなり、レベルの高い焼きものや、ガラスの食器などもあった。
じつに色々な才能が、いっせいに芽吹こうとしている。そんな感じが見られて、私は楽しかった。
たまに、れいれいしく値がつけてあるものもあった。むろん、学内で売れるはずもないのだが。
いくばくかの対価を払って、そんな絵を買ってやったこともある。
私は、生徒の作ったグラスでワインを飲んだり、海辺でひろった土管の切れはしに、女の子たちが彩色したオブジェを机に飾ったりした。
私のクラスの女の子から作品をもらったこともある。その一枚は、今でも私の仕事部屋に掛けて私の讃仰のまなざしをあびている。
吉永 珠子が、マリリン・モンローの写真をたくさんアレンジして、プラスティックで固めたオブジェも私のトレジャーだったが、後に接着剤が変質して、半分から崩れてしまった。私は泣きそうになった。