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先日、マーティン・スコセッシの新作、「ヒューゴの不思議な発明」を見た。
この監督が、はじめてとりくんだ3D映画だから見たわけではない。この映画が、アカデミー賞の作品賞、監督賞など、11部門にノミネートされているからでもない。
私は、つむじまがりなので、どんなにヒットしたからといって「アバター」や「アビエイター」を見たいとはおもわない。

私がこの映画を見たのは――映画の草創期を描いた「今までとは違う、個人的で、特別な作品」というスコセッシのインタヴューを読んだから。

映画の背景は――1930年代のパリ。
主人公は、まだ幼い少年「ヒューゴ」(エイサ・バターフィールド)。

スコセッシの演出に弛緩した部分はない。冒頭から、快調に、中央駅「ル・テルミニュ」(サン・ラザールだろうと思う)が紹介され、駅の構内でオモチャなどを売る老人、駅の花売り娘、駅でコーヒーを飲んでくつろぐオジサン、オバサン、いつしかこの駅に住みついて、駅の大時計のネジを巻いてい少年たちが次々に紹介される。

どうも、こういう映画のストーリーを要約するのはむずかしい。

少年の父(ジュード・ロウ)は機械の修理専門の職人。博物館から壊れた機械人形を持ち帰って、修理にとりかかったが、思いがけない事故で亡くなる。父は、人形修理のプロセスを克明に記録したノートを残していた。
少年はその日その日を生きるためにわずかな食べものをカッパライながら、父の残したノートをたよりに、機械人形の修理を手がける。
修理に必要な工具などは、駅の構内でおみやげやおもちゃなどを売っている売店から盗んでいた。だが、少年の盗みに気がついた店の主人、「パパ・ジョルジュ」(ベン・キングスレー)につかまってしまう。

「パパ・ジョルジュ」は老人で、これも初老の夫人、「ママ・ジャンヌ」(ヘレン・マックロリー)、孫の「イザベル」(クロエ・グレース・モレッツ)といっしょにひっそりと暮らしている。
「イザベル」は読書好きな少女で、「ヒューゴ」と知りあって、思いがけない冒険の世界に入ってゆく。

一方、「ヒューゴ」は「イザベル」とのかかわりで、機械人形のもとの所有者が、駅の構内で玩具などを売っている老人、「パパ・ジョルジュ」と気づく。
この老人こそ――リュミエール兄弟が発明したシネマトグラフイーを、実写からストーリー性と動きのある無声映画に発展させたジョルジュ・メリエスその人だった……

映画評を書くわけではないので、映画をみながらいろいろな事を考えるだけでも楽しかった。
(つづく)