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もの忘れ。最近の私のもの忘れは、もの忘れどころのレベルではない。

いろいろな物事、できごとがゴチャゴチャになっている。もっとも、ゴチャゴチャになっていることがわかるだけましだろう。

例えば――

エリマキトカゲ。テレビ・CMで……パプア・ニューギニアかどこかの砂漠に住んでいたトカゲ。ほかのトカゲは、いかにも爬虫類といった面構えだが、こいつは、エリマキを巻いて、立ったまま全力疾走していた。アイツは何に向かって走り続けていたのか。
いつ頃、私の前から去っていったのか。

オバタリアン。堀田 かつひこのマンガ。中年になって、恥も外聞もなく、人生をカッポしていた人類。あのオバサマたちは、まだ、日本に棲息しているはずだが、どうなってしまったのか。むろん、世代交代して、新種のオバタリアンが繁殖しているはずだが、私は、外出もしなくなっているので、あまり遭遇することがない。

E電。国鉄が民営化されたとき、それまで「国電」と呼ばれていた電車の名称が変更された。作曲家の小林 亜星が、この名称変更の識者の委員か何かで、とくとくとして、E電という新名称を発表した。ところが、だれひとりこの名称をつかわなかった。
国民総スカンを食ったっけ。
あまの邪鬼な私も、この名称は使わなかった。トルコ風呂が、ソープランドに改名したようなものだ。
酒場で飲んでいて――「おれ、帰る。オデンチャで」
相手はたいてい、けげんな顔をする。
「オデンチャでもE電やろ」
ニヤリとする。

紅茶キノコ。口裂け女。  コンナノもあったっけ。

何もかもゴチャゴチャになってしまった。ひどい話だ。

(つづく)