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暑いぜ。まだ、暑い日がつづいてやがる。
本を読む気になれない。

ところで、芭蕉に

 

    涼しさを 絵に写しけり 嵯峨の竹

 

という句がある。
若竹の新月になびくさまをデッサンするさえ、涼味あり。いわんや、嵯峨野の緑陰をめぐり、るいるいたる古墳、爛班(らんはん)たる青苔のほとり、一椀の茶を喫し、そぞろ、いにしえを回顧するにおいて、清涼、いうべからざる趣きのあるべし。
KDDIのPR雑誌「TIME & SPACE」最近号(2011.8/9)の表紙に――ライトアップされた嵯峨野の竹林が、表紙になっている。
風景写真として、芭蕉さんに見せてあげたいすばらしいショット。きっと、名句が生まれるにちがいない。

ただし、私のようなぼけ老人は、この暑さで頭がおかしくなるばかり。

このブログ、ときどき俳句が出てくる。何も書くことがないので、せめて俳句でも、というさもしい了見が見えるだろう。ヤキが回ったのは暑さのせいだけではない。
さて、一茶の句に、

 

  蓮の葉に のせたようなる庵かな  一茶

 

という句がある。この句について、明治32年の雑書に、

 

   斯(かく)の如き詩趣はすでに旧(ふる)く、したがって涼味も浅し。

 

とあった。おやおや。一茶もバカにされたものだ。
もっとも、おなじ一茶の

 

   湖に 尻を吹かせて セミの鳴く

 

といった句は感心しない。むしろ、

 

   朝顔に 涼しく食ふや 一人めし

 

などは、一茶らしくていいのだが。

 

さて、メシでも食うか。ネコの「チル」にも食事をさせなければならないので。
チョッ、くそ暑いぜ。