北海道大学の進化生物学者、長谷川 英祐先生はアリの行動を詳細に観察なさった。
その結果、ハタラキアリのなかには、まったくはたらかないヤツがいるという事実を確認したという。先生のインタヴューが、(TIME & SPACE 2011.4/5)に掲載された。
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よく働くアリは、観察した集団(コロニー)の20パーセント程度。
まったく働いていないアリも、やはり20パーセント程度という。
ここから先は――先生の観察をそのまま引用しておく。
そこで、よく働くアリを30匹、働かないアリ30匹をとり出して、それぞれ新
たなコロニーを作り、観察を1カ月間続けると、働かないアリだけからなるコ
ロニーでは一部はよく働くようになり、よく働くコロニーでも、一部は働かなく
なったのである。
この結果は、「反応閾値(いきち)モデル」という仮説に一致するという。
多くの人がいる部屋が散らかってくると、いちばんきれい好きな人が掃除をし、
また散らかってくると、同じ人が掃除をします。昆虫も同じように、刺激に対す
る反応、働きアリなら仕事に対する腰の軽さが個体によって異なっているのでは、
という仮説です。実際にミツバチやマルハナバチで、刺激に対する反応性が異
なることが確かめられています。
先日の地震で、書棚に並べてあった本が崩れ落ちて、私の仕事部屋はまるで津波のあとのようになっている。本がゴチャゴチャになってしまったので、少し掃除をした。途中で、この際いろいろな本を始末しようと思った。
思っただけで、何も手をつけていない。いまや、私は「働かないアリ」なのである。
(つづく)