東日本大震災で、私は、あらためて、日本のジャーナリズム報道の姿勢に、はげしい不信を抱くことになった。
たとえば――
6月27日、菅 直人(首相)は、内閣の閣僚交代の人事を発表した。
かんたんにいえば――震災後の復興を念頭にした内閣改造人事といってよい。
これをトップに出した大新聞の記事を、そのまま引用しておく。
菅首相は、27日、復興相と原発相の親切に伴う閣僚交代人事を決めた。復興相
には松本防災相を正式に任命するとともに、原発相には細野豪志首相補佐官を起
用した。これに伴い、蓮ボウ行政刷新相が退任し、松本氏が兼務していた環境相
は江田法相が兼ねる。自民党の浜田和幸参院議員(58)(鳥取選挙区)総務事
務官に充てることも決めた。だが、浜田氏の起用などを巡って自民党などが強く
反発しており、延長国会の審議に大きな影響が出ることは必至だ。
以上である。
何の変哲もない記事に見える。しかし、これだけの記事に、一つの疎漏、というより、恐らく意図的な隠蔽が見える。
閣僚交代の人事に関しては、当然ながら間違いはない。
問題は――「これに伴い、蓮ボウ行政刷新相が退任し」という一節にある。この記事を読むかぎりでは、「蓮ボウ行政刷新相」が退任しただけとしか読めない。
だが、この「閣僚交代人事」で、「蓮ボウ」は、そのまま退任したのではない。この人物は、ただちに「首相補佐官」に任命されたのである。
この記事は、その事実を無視したのか。そうではあるまい。まったくふれないことで、ことの重要さを私たちの眼からそらせようとしたのか。
おなじ、6月27日、菅 直人のとった行動を、おなじ一面の記事から引用する。
「副総理として入閣をお願いしたい」
27日午後、首相官邸。菅首相は執務室で向き合った国民新党の亀井代表にこう
言って頭を下げたが、亀井代は固辞した。亀井代が求めてきた大幅な内閣改造が
行われないことがわかったためだ。「大幅改造だったら、副総理も受けたが、そ
うじゃなかった」と周囲に不満を漏らした亀井代だが、首相が続いて就任を要請
した「特別首相補佐官」というポストは受諾した。法律的には他の首相補佐官と
同じだが、「特別」と付けた首相の言葉に、延命への執念を感じ取ったからだ。
(以下、略)
この交代人事が、さまざまな思惑に彩られていることを問題にしているのではない。現在の政局で、いくら大幅な内閣改造をしようが、無能内閣の命脈はすでに尽きているのだから。
私が、不快に思うのは――「蓮ボウ」が「首相補佐官」というポストに横すべりしたことを巧妙に隠している大新聞の姿勢である。些細な人事異動にすぎないのか。そもそも、このニュースを黙殺した意図は何なのか。
だれが見たって、「蓮」が「亀」と仲よく、無任所大臣になったわけで、ようするに、菅という狙公(そこう/猿まわし)のヒモの先で踊ってみせようというだけのこと。
いまや「蓮」は妖彗(ようすい)のたぐいだろう、と私は見る。
大震災から4カ月。
現在のようなかたちで着々と進められている菅内閣の「復興政策」に、私は妖気を感じている。