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私の好きな悪態は――てめえ、何さまのつもりでいやがる、ということば。ただし、私は他人さまに向かって、どなりつけたことはない。しかし、こんどばかりは、思わず、てめえ、何さまのつもりだ、とどなりつけた。

松本防災相という人物が、復興相に横すべりした。
この松本某は、承認してさっそく、被災地に出向いて、知事に面会した。
このときの模様がテレビで報道されたが……その態度のわるさは特筆すべきものがあつた。
ふてぶてしい面構えで、岩手県知事を見据えて、ドスのきいた声で、「知恵を出したところは助けるが、出さねえところは助けてやらん」、とヌカした。
宮城県知事に対しては――県ではコンセンサスをだせ、そうでなければ何もやらんぞ、とホザいた。
被災地に対する、あまりにも傲岸なもののいいように、世間の批判をあびると、「私は、九州の人間で(血液型が)B型ですから、口のききかたを知りません」とさ。よくもヌケヌケ、ぬかしやがる。
九州出身で(血液型が)B型の人間は、みんな、ああいう口の聞き方をするのか。
冗談ではない。そんな理由は、まともな弁解にはならない。
まるで非論理的ないいかたに、この人物の低劣な資質、性格、傍若無人に過ごしてきた過去のいかがわしさが集約されている。

菅首相に呼ばれて、辞表を提出したが、このときのいいぐさに、注目すべき部分が二つあった。
一つは――宮城県知事とのやりとりは――「ナゾかけ」だったという。つめかけた報道陣から、何の「ナゾかけ」か、と質問されて、黙秘した。松本復興相なる人物の言動を読み解く「鍵」がここにある。
この「ナゾかけ」の意味は、わかる人にはピンときたはずである。

さて、もうひとつは――この人物は、ボソリと謝罪の言葉をのべたあとで――「私は、被災された人たちからは離れませんから」とくり返した。
じつに、おそろしいことばである。

松本某は、38歳で福岡県から衆議院議員に当選した。この輝かしい経歴だけを見れば、だれしも非常に優秀なエリートを想像するだろう。だから、日頃、傲岸なものいいを身につけたと思うのは間違いだろう。土建屋あがりのこの人物の背後に何があるのか。

私は他人さまに向かって、てめえ、何さまのつもりだ、などと、悪罵を浴びせたことはない。しかし、こんどばかりは、テレビに向かって、てめえ、何さまのつもりだ、思わず、どなりつけた。