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原稿を書く。
書いている原稿と何の関係もない音楽を聞きながら書く。
ムード作りのようなもので、音楽を聞いていながら、まるで別のことを書いているほうが楽しい。
もっとも自分がよく知っている曲を聞きながら原稿が書けるかどうか。ひきずられてしまうだろう。

いちばんいいのは、中国の二胡の演奏。
たとえば「二泉映月」。誰の演奏でもいいのだが、へんに洋楽ふうにアレンジされた「二泉映月」は聞きたくない。そこで朱 昌燿の演奏を聴く。
二胡の曲には、「空山鳥語」、「聴松」などいろいろ名曲が多いのだが、「漢宮秋月」などを聞きながら、高橋 まり子が贈ってくれた宮古島のお菓子、「ちんすこう」をいただきながら、これも田栗 美奈子が贈ってくれた狭山の新茶をいただく。別世界に遊ぶような気分になる。
二胡の演奏では、日本では、陳明(チェン・ミン)が有名だと思う。NHKで放送した「アジア古都物語」のテーマで知られている。彼女の二胡の演奏もよく聴く。
もうひとり、同名の歌手、広州の歌手、陳明(チェン・ミン)の歌が、私は好きなのである。
こちらの陳明(チェン・ミン)は、私のひそかな評定では、王 菲(フェイ・ウォン)に比肩するほどの歌手なのである。

たとえば、映画のサウンドトラックを聞きながら原稿を書く。ヴァレリー・ルメルシェ監督の映画、「カドリーユ」。

私はこの映画を見ていない。原作はサッシャ・ギトリの戯曲。ヴァレリーは有名な歌手で、映画の監督。

映画を見ていないのだから、音楽を聞いて映画を思い出すこともない。ただ、軽快なムード・ミュージックとして流しているだけ。

ついつい原稿を書くどころではなくなって、ワインを飲みしこる。私の悪癖。