久しぶりに、知人に会って、自然に口を衝いてでることば。
「やあ、しばらく」
相手が親しい知人であれば、会わなかった時間をいっきに埋めて、なつかしさが迫ってくる。だからこそ、これだけのことばで挨拶として通用する。
日本人は、いつ頃からこんな挨拶をするようになったのか。
昔の俳句を読んでいて、思いがけず、
やあしばらく 花に対して 鐘つくこと 維舟
という句を見つけた。
作者は貞門の俳人で、ずいぶん剛腹な人だったとか。俳諧の道では、いろいろな人と争ったらしい。しかし、鬼貫、言水が門人だったというから、一門の指導者としてはすぐれていた人物。
どこの世界にも、こういう人はいる。人間的にいやなやつだったのだろう。延宝8年、76歳で亡くなっている。
ところで――
親しい人から近刊の本を頂いた。手紙がついている。
その結びの部分は、
どうか、お風邪など召しませんように。ご会拶に伺える日を楽しみにしております。
まさか、挨拶という言葉が書けないはずはない。してみると――わざと「会う」という言葉にひっかけて、造語(ネオ・ロジスム)とシャレたらしい。
こういういたずらは楽しい。というより、こういうさりげない「いたずら」が好きな人が好きなのである。
いただいた本は私にはむずかしい内容だったが、これから少しづつ読むことにしよう。