おや、春雨か。仕方がない。ぼんやり俳句を読みふけることにしよう。
世の中は 何がさかしき 雉(きじ)の声 其角
これまた、あまり感心できない句だが、それでも、
隠すべき事もあるなり 雉子(きじ)の声 千代
雉子(きじ)鳴くや 仏に仕ふ 身は安き よし女
などよりは、ずっといい。またまた、多代さんの句を調べてみると、
隠るるも すばやき雉子(きじ)や 草の風 多代
首伸べて 見廻す雉子(きじ)や 草の中
やっぱり、いいなあ。
そこでまたもや、加賀の千代と並べてみる。
思ひ思ひ 下る夕べの 雲雀(ひばり)かな 千代
上りては 下を見て鳴く雲雀(ひばり)かな
二つ三つ 夜に入りそうな雲雀(ひばり)かな
おやおや。
千代の技巧句よりも、
美しい空に はらりと 雲雀(ひばり)かな 多代
さりげなく一瞬の冴えを見せる多代さんの句のほうが好きなのである。
(つづく)