助詞止めの句をいくつか挙げてみよう。
夢によく似たる夢かな 墓参り 嵐雪
啄木鳥(きつつき)の枯木さがすや 花の中 丈草
暁や 人は知らずも 桃の露 暁臺
お手打の夫婦なりしを 更衣 蕪村
さすがにいい句ばかりがそろっている。
山吹の露 菜の花のかこち顔なるや 芭蕉
春の雨 別れ別れに 見ゆるかな 鬼貫
物言はず 客と 亭主と 白菊と 蓼太
ここまでくると、私などはうっとりとするだけである。こうした一句を読んでいるだけで、いろいろな連想がはたらく。直接、その句にかかわりがないにしても、その句を口にのせてみるだけで、自分の内面にひたひたとひろがってくるものがある。