たまたま古道具屋で「ハリウッドからの遺書」という1本のビデオを見つけた。このときの私は、関係のないことを思い出していた。
『ルイ・ジュヴェ』を書いていたとき、神田の古書店の、ゾッキ本だけを並べた棚に、ジュヴェの著書が3冊並んでいた。いっしょに本を探してくれた田栗 美奈子が、まったく偶然に見つけてくれたのだが、私は眼を疑った。
私がずっと探していた本が、こんなところにあった! まさか、こんなところでジュヴェの本がころがっていようとは。驚きと同時に、天の配剤のようなものを感じた。
むろん、ただの偶然と見ていい。たまたまジュヴェの本を売り飛ばした人がいた。古本屋は、今どきこんな本を買う客はいないと判断してゾッキ本の棚に突っ込んだ。それだけのことだろう。たまたま私はルイ・ジュヴェの評伝を書きつづけていた。ウの目タカの目で資料をさがしていた私が、偶然見つけただけのことだろう。
しかし、この時の私は因縁のようなものを感じた。この本たちは、私に訴えている。『不思議の国のアリス』に出てくる Drink Me の呪文のように。
さっそくこの本3冊を買い込んだ。
私にとって至福のときであった。
私が見つけたビデオ、「ハリウッドからの遺書」は、1本、30円。私にとっては、まさに掘り出しものだった。さっそく電話で自慢すると、美奈子ちゃんもいっしょに喜んでくれた。
ビデオの「ハリウッドからの遺書」を見つけて、なぜこんなに嬉しがっているのか。いずれ、みなさんにもわかってもらえるかも知れない。