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東 恵美子、ジーン・シモンズの訃につづいて、双葉 十三郎の訃を知った。
双葉さんは、私にとっては大先輩の映画批評家だった。よく試写で見かけたが、口をきいたことはない。しかし、映画、ミステリーについて、じつにさまざまなことを教えていただいたような気がする。
双葉さんに『映画の学校』という著書がある。私が『映画の小さな学校』という編著を出したのは、双葉さんに対するささやかな敬意のつもりもあった。

双葉 十三郎さんが亡くなられて、すぐに登川 直樹さんの訃報を聞いた。

この世代の人々では、南部 圭之助、海南 基忠、内田 岐三雄、野口 久光といった人々がすでに白玉楼中の人となった。
私は個人的に飯島 正さん、植草 甚一さんに親しくしていただいたが、双葉 十三郎さん、登川 直樹さんの話を伺う機会がなかった。それでも、おふたりのお書きになるも
のにはいつも敬意を払っていた。

そして、立松 和平が亡くなった。

たとえ縁は薄かろうと、私の知っている人たちがつぎつぎに鬼籍に入ってゆく。心から残念に思う。それぞれの人の死は一つの時代の終わりと見える。
月並みな感想といわばいえ。月並みでは切実な思いではないと誰がいえるか。