江戸女の句を並べてみよう。
日の筋や 岩間離れて ならぶ鴛(おし) 多代
木々の冬 湯女(ゆな)いる温泉場(いでゆ)となりにけり きよ子
寒き夜や 戻らぬ人を待ちにける 壺中女
いずれも恋の句。壺中女とはめずらしい俳号だが、おそらく遊女なのだろう。おのが閨を壺中天と洒落た女の粋、または「あわれ」を見るべきだろう。
遊女の句では、一夜の交情のあと、「後朝(きぬぎぬ)の文に」、
別れ行く 身はあとさきの 寒さかな 幾代
私の好きな句。女のあわれが見えてくる。(さくしゃの名前がいい。)
京都、島原に、長門という遊女がいたという。日頃、花いかだの紋をつけていたが、この紋を初心なりとして、嘲笑した人がいた。(どこにでもこういう阿呆がいる。)
長門は答えた。
流れなる身に 似合(にあわ)しき 花いかだ
この一句、たちまち遊廓の女のかなしさ、ひいては美しさが眼に顕ってくる。
わが袖の蔦や 浮世の村時雨 薄雲
これは吉原の太夫の句。これは、すばらしい。
師走。江戸の女の句を読みつづける。
今年の師走も、そんなふうに女人の句を読んで過ごすことにしよう。私の年忘れ。