享年。
年ヲウケル。簡野 道明の『字源』には、郭有道碑『稟命不融、享年四十有二』という例文が出ている。
おなじ意味の、行年を調べてみると――行は歴。経過せしよはひ。荘子の「天道」から、「行年七十」という例が出ている。
私は、『ルイ・ジュヴェ』のなかで、
一九五一年八月十六日午後八時十五分、ジュヴェは死んだ。享年、六十三歳。
と書いた。
このとき、「享年」と「歳」が重なるのではないか、と注意された。そんなことを考えたこともなかった私はそのままで押し通したが、ひょっとして「享年・・歳」といういいかたは誤りなのだろうか、と内心、疑懼した。
ずっとたって、馬琴の『絲桜春蝶奇縁』を読んでいて、
享年、ここに廿三歳。
という表現をみつけた。
馬琴が書いているのだから、間違いではなかろう。ホッとした。