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 いろいろ資料を読んでいるうちに飽きてくる。
 気分転換に散歩する。雨が降っていると、散歩もおっくうなので、ビデオを見たりDVDを見たり。途中まで見て、おや、これは前に見たような気がするなあ、と思いはじめる。しかし、最後まて見ることもあれば、別のものを見たり。
 それにも疲れると、適当に本をひろってきて、読み始める。

 一茶の日記を読んでいて、

    太田屋仕出屋に入中食
    ワンワン喜太郎ト云者来
    仙台侯の舟ニ大竿
    千人塚 イカイ根に有

 という記述が出てきた。ざっと読んで、さて、何のことかわからない。
 一茶は、銚子の俳人、大里 桂丸を訪れて、いっしょに浜の見物に出かけた。「太田屋」という割烹旅館でお昼を食べた。桂丸は気をきかせて、芸者を呼んだらしい。
 千人塚は、銚子の、飯貝根(いがいね)にある。これはわかったが、「仙台侯の舟ニ大竿」というのがわからない。
 「ワンワン喜太郎」という芸者の名がおもしろい。「ワンワン」はイヌを連想させるのだが、客がワンワン(いっぱい)くるという含みもあるのか。田舎芸者なので、こんな名がついたものだろうが、別のことも想像させる。

 一茶はこの日記に、

    丘釣を女もす也 夕涼み
    釣竿を川にひたして 日傘かな
      浄国寺村に入
    下闇や 精進犬のてくてくと
    松の木に 蟹も上りて 夕涼
    涼涼や 汁の実を釣る せどの海

 といった句を書きとめている。さすがに、いい句が多い。
 精進犬という語もはじめて見た。犬が「てくてくと」歩いているのもいい。涼涼は、どう読むのだろうか。ほら、わからないことが出てきた。
 そんな詮索はどうでもいい。
 こういう句から、昔の房総の風景を思いうかべる。銚子の海辺を散歩しているような気がして楽しい。私の気分転換法。