人生の出会いのありがたさは知っているつもりである。現在の私が在るのは、けっして数多くはないけれど、人生のそれぞれの時期に、いろいろな人に出会えたからだった。
もの書きとしては、荒 正人、埴谷 雄鷹、佐々木 基一、本多 秋五、山室 静、平田 次三郎といった先輩批評家たち。野間 宏、安部 公房たち。
芝居の世界では、内村 直也、原 千代海といった劇作家たち。この人たちのことを、書いてみようか。
そして、たくさんの役者たち、女優たち。これは書けないだろう。
年をとってからは、やはり出会いはなくなってくる。
まして、刎頸の友というほどの友だち、知友は少なくなってくる。もはや、幽明境を異にしてしまった友だちが多い。
エディット・ピアフは、アメリカに行ったとき、たくさんの有名人と知り合ったが、そのなかで、ただひとり、マルレーネ・ディートリヒとは、一目見たときからすっかり意気投合して、親友になったという。
こういう出会いは、運命的なものかも知れない。
私は、芸術家どうしの反目、確執に興味がない。そうではなく、死友というべきかかわりをもつ芸術家どうしの出会いに関心をもつ。
そういうかかわりを『ルイ・ジュヴェ』で書いたが、いま書き続けている仕事でも、それがひとつのテーマになる(と思う)。
いつ完成するのかわからないのだが。