(つづき)
当時の女優たちのアンケート。テーマは「私淑する俳優」。これもおもしろい。
浦辺 粂子 → 尾上 菊五郎、中村 翫右衛門、フランソワズ・ロゼエ、アドルフ・マンジュウ。
霧立 のぼる → ゲーリー・クーパー、ジーン・アーサー、クローデット・コルベール。
高山 広子 → 田中 絹代、徳大寺 伸、佐分利 信、飯田 蝶子、浅香 新八郎。
椿 澄枝 → 小杉 勇、三宅 邦子、ミリアム・ホプキンス、ベット・ディヴィス、アナベラ、ハーバート・マーシャル。ツアラ・レアンダー。
真山 くみ子 → マーナ・ロイ。
三浦 光子 → 田中 絹代、ジーン・アーサー。
水戸 光子 → クローデット・コルベール。
三宅 邦子 → シャルル・ポワイエ、ポール・ムニ、マルセル・シャンタル、シルヴィア・シドニー、ベッテイ・ディヴィス。
村田 知英子 → 小杉 勇、三宅 邦子、ベット・ディヴィス、ハーバート・マーシャル。
山田 五十鈴 → 尾上 菊五郎、中村 翫右衛門、田中 絹代、吉川 満子。
山路 ふみ子 → 岡田 時彦。
森川 まさみ → エリザベート・ベルクナー、クローデット・コルベール、マーゴ。
若原 春江 → ベット・ディヴィス。
高山 広子、三浦 光子、山田 五十鈴が、田中 絹代をあげている。
田中 絹代は「マダムと女房」、「花ある雑草」、「愛染かつら」から、戦後、「不死鳥」で失敗したあと、「好色一代女」、「サンダカン八番娼館」まで、長いキャリアーを積み重ねて行った名女優だった。
日本の女優たちが「私淑」したハリウッドの俳優、女優たち。ベット・ディヴィス、クローデット・コルベールのふたりがリーディング・レイデイだったらしい。
クローデットは、アカデミー賞の「或る夜の出来事」の余波だけではなく、「淑女と拳骨」が公開されたせいたろう。
椿 澄枝がツアラ・レアンダーを、三宅 邦子がマルセル・シャンタルを、森川 まさみが、エリザベート・ベルクナー、マーゴをあげていることに驚かされる。
日米戦争はまだ少し先のことだが、外国のスターたちの誰が人気があったのか。なぜ、人気があったのか。その理由は何だったのか。そんなことを考えながら、このリストを見ていると、もう誰も知らない俳優、女優たちの顔や姿があざやかに浮かんでくる。
当時、フランス映画「格子なき牢獄」が公開されようとしていた。雑誌の表紙に、美しいコリンヌ・リュシェールの写真が出ている。
その裏は「光と影」の宣伝。島津 保次郎/「東宝」入社第一回作品。原 節子、佐分利 信の写真が出ている。
1939年。数年後に日本が壊滅するとは誰ひとり考えもしなかった時代。