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 ときどき、俳句のようなものが頭をかすめる。
 たいてい、すぐに忘れてしまう。俳句ともいえない駄句ばかりだから、忘れてもいい。
 歳末、小雨の午後、何も仕事をしない一日。

       さし迫る用事もなしに師走かな

       落雷はげし 年の瀬の夜明け前

 そういえば、歳末に山に登ったことがある。ほかに登山者がいなかった。疲労しきって、やっと下山したのだが、ほとんど客のいないランプの宿で。

       山の湯は大つごもりの薄明り

 そういえば、病気で寝正月ということもあった。

       つごもりをつたなく病んで薄き粥

 最近の私は登山もできなくなっている。哀れというべきか。
 桜が咲いたが、お花見もしなくなった。