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 1作や2作、戯曲を書いたところで、劇作家として通用するはずはない。
 小さな劇団でも結成して、自分で公演を企画するのでもないかぎり、自作を舞台にかける可能性はほとんどない。
 せめて、読者に読んでもらいたいという思いも、雑誌に発表される可能性はない。
 同人雑誌でも、戯曲を掲載する機会は少ないだろう。
 たったひとりの観客も、たったひとりの読者も得られないまま、芝居を書きつづけてゆく、というのは、あまりにも過酷な試練になる。
 むろん、それが表現者の宿命であるというのは――誤りなのだ。もの書きの孤独は、書くという営みの結果ではなく、条件なのだ、というのか。